放蕩者に魅せられて

放蕩者に魅せられて (ラベンダーブックス)

放蕩者に魅せられて (ラベンダーブックス)

19世紀英国。賭けや飲酒に明け暮れ、破滅的な生活をしていたレジーが、ある日突然、大きな土地を与えられ、領主になることに。そこは優秀な執事によって管理され、大いに繁栄していたが、新領主となったレジーが対面したのは、男の装いに身を包む女性執事だった。執事のアリスは、女であることを理由に解雇されるのではないかと恐れるが、彼女の実績をかい、レジーは雇用を続行する。はじめはレジーを警戒するアリスであったが、彼の圧倒的な男らしさにふれ、次第に惹かれていく。だが、レジーには深刻な飲酒癖があり、酒が入ればアリスに興味を示すが、しらふのときは無関心。アリスは禁酒の支えになりながらも、酔っているときでないとキスしてくれないことに絶望を感じはじめていた―RITA賞を受賞した、ヒストリカルの最高峰、ついに初邦訳。

いつもは翻訳ロマンスには触れないのですが、とても良いストーリーだったので読書記録に残したいと思います。
この作品、ロマンス以外にもっと深いところで人間の強さ・弱さ・脆さ・気高さなどが描かれています。私、あまり放蕩者のヒーローは好みじゃないのですが、レジーにはすごく魅力を感じたし、共感できました。もともと中身のある放蕩者なので、改心するというよりも、いかにして己に打ち勝つか・・・ってところでもがき苦しむんです。
アルコールであれ何であれ、「依存症」を克服するには本人の確固たる意志のほかに周囲のサポートが必要です。レジーの周りにはヒロイン・アリスのように本当の意味で支えになる存在もあれば、無意識に足を引っ張ってしまう人(この場合、レジーの若い友人とか)、彼の長所を理解していてあるがままを受け入れてはいるけど依存症克服にはプラスマイナス=ゼロ的なひとたち(側仕えなど)もいます。その人たちと関わりながら、三歩進んで四歩下がり、また頑張って前に進もうとするヒーロー・レジーの様子は現実味があり、感動的でした。 
重たいストーリーのようでいて,登場人物たちの会話には(ちょっぴり皮肉な)ユーモアがあります。 あまり質が良いとはいえない翻訳に負けないだけのMJPの筆力を感じました。
問題の翻訳ですが、Raquelさんのブログを先に拝見して覚悟ができていたせいか、200ページ過ぎからはあまり気にせずに読了できました。主語が分からなかったり余計だったりする文章もあって、時々立ち止まりましたけど・・・(ヒロイン=「執事」は毎回「管理人steward」と頭のなかで変換してよみましたよ・笑)。