シーサイド・トリロジー  

Nora Robertsのちょっと昔のコンテンポラリー三部作です。
今後の目標の一つが我慢して「もっとアメリカ英語を聴くこと」。ナレーターの声が良いような気がしたので、あまり考えないままaudibleでダウンロードしたInner harbor。トリロジーの第三作目だったと知り、一作目から読むことにしました。第1作目は翻訳で、第2,3作目は翻訳本を開きながらオーディオブックを聴いたり、どちらか一方だけにしたりと、その時の気分で読みましたが、三作目のInner Horborに対してはほとんど怒りのレビューになってしまいました…。
全作まとめて★★★

海辺の誓い―シーサイド・トリロジー〈1〉 (扶桑社ロマンス)

海辺の誓い―シーサイド・トリロジー〈1〉 (扶桑社ロマンス)

クイン三兄弟(キャメロン、フィリップ、イーサン)の育ての父レイが、新たに養子にしようとしていた少年セスを残して交通事故死してしまうところから始まります。セスやレイを巡る状況にはまだ謎が残されたまま、父親から託されたセスを守るために三兄弟はこれまでの自分たちの生活を一変させざるを得なくなります。
シリーズ一作目は、レース好きで世界中を回っていたプレイボーイの長兄キャメロンと、セスを担当するソーシャルワーカーのアンナのロマンス。シリーズの最初だったので、それなりに楽しめましたが、ヒーローにもヒロインにも特に魅力は感じませんでした。レイ・クインが亡くなる間際に意識を取り戻して喋ったのは、あれは現実だったのでしょうか? 気管チューブ入れられて人工呼吸器につながっている人が話をするなんて、想像しただけで気持ち悪くなっちゃいました。後に出てくる降霊現象みたいなのは気にならないんですけどね。
愛きらめく渚―シーサイド・トリロジー〈2〉 (扶桑社ロマンス)

愛きらめく渚―シーサイド・トリロジー〈2〉 (扶桑社ロマンス)

Rising Tides (Chesapeake Bay Saga)

Rising Tides (Chesapeake Bay Saga)

 クイン兄弟がセスとの絆を深めていく中で進行するイーサンと幼馴染のグレイスのロマンス。二人ともその辺にいそうな、どちらかというと地味なタイプですね。トリロジーの中では一番好きなヒーローとヒロインですが、熟考型で優しい心の持ち主のはずのイーザンがとった行動は思慮不足でグレースをものすごく傷つけるものだよなぁ・・・と。 ところで前作でキャメロンと結婚したアンナですが、クイン家の一員となったあともソーシャルワーカーとしてセスの担当を続けられるもんなんですかね〜 担当者変わらなくて良いのかしら? それに実の母が行方不明だからって 福祉課がセスを宙ぶらりんの状態のまま何か月も放置するのもありえないような気がします・・・。
明日への船出―シーサイド・トリロジー〈3〉 (扶桑社ロマンス)

明日への船出―シーサイド・トリロジー〈3〉 (扶桑社ロマンス)

Inner Harbor (Chesapeake Bay)

Inner Harbor (Chesapeake Bay)

  兄弟の中で一番洗練された感じの都会派フィリップと、セスの実母グロリアの妹であるシビルのロマンス。 この話、ヒロインのシビルに対して全く好感を持てなかった。ハーバード出の心理学者Dr.シビル・グリフィンという肩書のわりにあまり知性を感じさせないキャラ。 人間の行動パターンを研究していていつくかの著書まであるらしいけど、作中で書いている文章は日記なのか論文なのかわからないような稚拙な内容。フィリップも立腹していたけど、セスのことを「対象は〜(The subject is〜)」と書いているのには嫌悪さえ感じた(客観的に捉えられるようにという彼女の言い分は私には通用しなかったです。「Itと呼ばれた子」を思い出したくらい)。姉のグロリアの生活レベルがかなり低く、乱れていることは、いくら希望的観測でとらえようとしたって一目瞭然。それなのに「姉には自分の息子と生活する権利がある」なんて、よく言ったものだ(怒)。姉に同情して肉親として更生させようという気持ちがあるのならそちらが先だろう。こういうときこそ客観的に考えるのが心理学者だろうに、それが全くできていない。最後の最後には姉を蔑んで見捨てて縁を切ってやったらしいけど、その豹変ぶりには驚き。 訳者も書いていたように、セスの母グロリア・デローターの人物設定には私も大いに不満が残る。その無謀な設定にシビルも引っ張られた感じか…。 ロマンス小説で私が一番嫌いなのが更生不可能な鬼畜母の存在。特に自分の子を他人の手で虐待する描写はヒロインのレイプシーンより嫌い。
ロマンスに集中した作品ならば細部まではあまり気にならないことが多いけれど、ロマンスと並行して進行する「ドラマ」にけっこう重きを置いている作品の場合、しっかりとした設定で書いてくれないとただの三文小説になり下がってしまう危険性大だと思う。