One Perfet Rose  

One Perfect Rose (Fallen Angels)

One Perfect Rose (Fallen Angels)

★★★★
Fallen Angelsシリーズの#7。シリーズの原書はほとんど絶版になっているため、いきなり最終巻を読むことになりましたが、内容理解に特に支障はありませんでした。今度#1の翻訳版がでるようなので楽しみです。


体調不良が続いていたStephen Kenyon(Ashburton公爵)は、ある日、主治医から不治の病であと数カ月の余命だと告知されます。ショックを受けたStephenは気持ちの整理をつけるため、側仕えも連れずに身分を隠して一人旅にでます。道中で川でおぼれかけた少年の命を救い、自身も軽傷を負ったことから、少年の家族で旅の一座、Fitzgerald一家としばらく寝食を共にすることになります。 Fitzgerald一家は笑顔の絶えないとても暖かな家族で一緒にいると癒されます。そして特に長女のRosalindに強く惹かれるStephenでしたが、余命いくばくもないという事実が彼に重くのしかかってきます。

Rosalindは実は、Fitzgerald家の養女です。幼い頃、ストリートチャイルドだった彼女を救ってくれたのがFitzgerald夫妻でした。役者仲間と結婚した後、未亡人となり、今は女優兼劇団のマネージャー的存在として一家に尽くしていました。RosalindもまたStephenに惹かれながら、彼の眼に何か暗い影を感じていました。
徐々に悪化していくStephenの病、断ち切れないRosalindへの想い…二人の運命は…。
ハッピーエンドが約束されたロマンスでなければ、読者は本当にStephenが死んでしまうと思うかもしません。が、「お約束」のおかげで最初からStephenの体に起こっていることが簡単に予測できてしまいます。Rosalindの出生の秘密も大体想像がつきます。
そんなわかりきった筋書きなのだけれど、Day Fifty-nine、Day Thirty-two…というようにStephenに残された日々を数える形で、淡々と丹念にヒーローの心境や日々の出来事が描かれているため、読む方も(良い意味で)淡々とページをめくらされます。ドラマチックな展開もヒーローとヒロインが感情的に激しくぶつかりあう場面もなかったのが、却って新鮮でした。自分の運命を静かに受け入れていくヒーローと、ネガティブな感情をコントロールできるとても大人なヒロインの組み合わせが、作品全体にしっとりと落ち着いた雰囲気を作りだしていました(落ち着いたというより、「暗い」と解釈する人もいるかも知れませんね)。
シリーズの最初の作品を読んでいた方がヒーローの性格をもっと理解できたのかもしれません。ヒロインのキャラクターは、生い立ちから考えてとても納得できたし、共感できました。MJPの他の作品も読んでみたいです。