These old shades

These Old Shades

These Old Shades

★★★★★
私にとって初めてのGeorgette Heyerですが、本当に面白かった! 文句なしの五つ星です。

舞台はルイ15世治世下のフランスとジョージ王朝時代のイギリス。派手できらびやかな当時のフランス貴族社会ですが、そのなかでは策略や陰謀が渦巻き、モラルの低下が顕著だった時代です。この時代ならではの魅力がたっぷりのストーリーでした。
イギリス貴族のAvon公爵は、「Satanas」とあだ名されるほど、悪名高い人物。ある日、公爵はパリの裏通りで、粗暴な兄に負われて逃げている少年Leonと出会します。Leonの赤毛と黒いまゆを目にした瞬間、公爵の悪魔的?第六感が働き、身に付けていた宝石と引き換えにLeonを買い、自分のPage(小姓)として側におくことにします。


長年の宿敵St Vire伯爵への復讐を企みながらも、徐々にLeonに魅かれていくAvon公爵・・・と書くと「えっ?」と思われそうですが、Leonは実はLeonieです。ある時、偶然Leonieの柔肌を目にして…なんてよくある展開ではなくて(笑)、鋭い観察眼と頭脳の持ち主である公爵は、最初から気づいていてLeonieを拾いました。 
Avon公爵は、Leonieをパリの社交会場やベルサイユ宮殿へPageとして連れて行き、St Vireの目に留めさせ、その後、イギリスの領地へ連れて行きLadyとして教育します。
中盤からは、誘拐、救出、フランス社交界へのLeonieのデビュー、そして復讐劇の結末は・・・と目の離せない展開が続きます。

Heyerは評判どおり、人物描写に優れていて、登場人物が生き生きしていました。Avon公爵の沈着冷静な(冷淡ともいえる)言動は本当に目に浮かぶようでした。Leonieには少年のような幼さと無防備さとともに、年齢以上の芯の強さが同居しています。脇役の公爵の妹弟や友人たちの存在も光っていました。
amazon.com等のレビューを読むと、公爵とLeonieの20歳という年齢差を受け入れ難いと感じた読者も少なくないようですが、私は「悪魔」のAvon公爵にはLeonieこそぴったりな女性だと感じました。気性の激しいところもあるけれど、公爵に対し無償の愛を捧げるLeonie。自然とその愛に応えざるを得なくなっていく公爵の様子がとても感動的でした。自分のための復讐よりもLeonieへの仕打ちに対する返報へと、公爵の気持が変化していく様子もよいです。
喩は悪いかもしれませんが、犬嫌いだった人がひょんなことから子犬を飼うはめになって、その無邪気さと飼い主を一途に慕う子犬の存在が宝物になってしまう・・・それと印象が重なります。だからDevil公爵の心をとらえるのは子犬のようなLeonieしかいなかったと信じられます。